家族の年齢が高なってくると「認知症になったらどうしよう」といった会話も増えてきますが、自分はならないといった過信ももてないくらい身近な症状になってきました。
認知症に対しての不安要素や対処法はどういったものがあるのでしょうか。
認知症の人が起こした事件や事故
高齢化社会といわれるようになってから、認知症の話題もよく耳にするようになりました。ただ介護が大変なだけでなく、認知症になったがゆえに起こってしまった事件や事故も増えています。
◎平成27年10月、宮崎県で軽乗用車が市中心部デパート前交差点付近からJR宮崎駅前につながる通りの歩道に進入し暴走し、6人が相次いではねられました。
この事故で2人が死亡、4人が重軽傷を負っています。軽乗用車は駅西側の交差点で横転し、停止しましたが、運転していた男性(73)は数年前から認知症の症状が出ていたと判明しています。
◎2,018年5月、群馬県高崎市の特別養護老人ホーム「花みづき寮」で介護福祉士の女性(23)をハサミで刺したとして、入居者の無職の男性(87)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕しました。
男性は花みずき寮のリビングで夜勤中の女性の左胸をハサミ(刃渡り88・3cm)で刺し、殺害しようとした疑いがあり、女性は1週間の軽傷を負っています。
◎2004年12月、埼玉県さいたま市で起きたディスカウントショップ『ドン・キホーテ』の放火事件では店員3人が死亡し、8人が負傷しました。
当時47歳だった女性被告は二審の東京高裁で、精神鑑定で脳の萎縮が認められ、FTD(前頭側頭型認知症)の可能性が疑われましたが、東京高裁は70~80代の高齢者と同程度の判断能力はあったとして、被告の上告を棄却し無期懲役が確定しています。
認知症と物忘れの違い
物忘れは、物覚えが悪くなったり、なかなか人の名前が思い出せなくなったりしますが、これは脳の老化によるものです。
認知症は脳が老化して起こる物忘れとは違って、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態のことを指します。認知症が進むことで、徐々に理解する力や判断する力がなくなり、日常生活などに支障が出てきます。
認知症の種類
認知症の約半数はアルツハイマー型認知症といわれています。その次に多いのがレビー小体型認知症、その次が血管制認知症とになります。
認知症の約85%がこの「三大認知症」で、残りの15%は正常圧水頭症、正常圧水頭症、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物やアルコールに関連するものなどがあります。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で一番多いと言われています。アルツハイマー型は、脳の神経細胞が減ることで脳が小さく委縮してしまうため症状があらわれ徐々に進行していき、急激に進行したりすることはありません。
アルツハイマー型は60代以上で年齢が高くなるほど多くなりますが、「若年性アルツハイマー病」は40~50代などの若い世代で発症します。
若い世代での発症した人の場合には、近親者にアルツハイマー病がみられることが多いので遺伝性があるといわれていますが、高齢になってからの発症の場合は遺伝との関係はあまりないとされています。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症の原因は不明とされていますが、脳の広範囲にレビー小体という異常な蛋白がたまる進行性の病気で、蛋白がたまることで脳の神経細胞がだんだんと減っていきます。
1990年代後半くらいから広く知られるようになりましたが、認知症患者さんでみる割合としては約20%くらいで、75~80歳くらいの高齢者に多くみられます。
レビ一小体病の特徴的な症状は、認知機能の変動、繰り返し出現する幻視、パーキンソン症状で、まとめて3徴と呼ばれています。
血管性認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する認知症です。脳血管障害の場所や程度によって、症状が異なります。
そのため、できることとできないことが比較的はっきりとわかれていることが多く、手足の麻痺など神経症状が出る場合もあります。
脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に比べると男性の割合が高く、その比率は女性の2倍近くだといわれています。
脳血管障害発生によって発症するため若い世代でも起こることがありますが、この場合には「高次脳機能障害」と診断される場合もあります。
性格が認知症発症を左右する
ある認知症の研究の結果を分析すると、いろいろな性格のうち認知症の発症リスクと最も強く関係していたのが「責任感」だったという結果が出ています。
責任感が強い人はそうでもない人と比較すると、認知症の発症リスクが約35%低下していたそうです。
さらに、「自制心」と「勤勉さ」も認知症の予防につながっていることもわかりました。
認知症になりにくい人の性格とは、責任感があって、自分をコントロールでき、勤勉に働く人(誠実な人)という性格を持ち合わせている人といえそうです。
逆に、認知症になりやすい人は、協調性がなく、イライラしやすく気にしやすい人だといわれています。
社会的孤立は認知症の大きな危険因子といわれていますが、どちらの性格も周囲とのよい人間関係が築きにくいので、社会的孤立を招く可能性が高く、そのことで認知症の発症リスクが高くなってしまうそうです。
他にも、気にしやすい人はストレスの影響を受けやすいので、鬱状態になりやすい傾向があるともいわれているので注意が必要です。
超音波を使ったアルツハイマー治療
死因統計でみたとき、アルツハイマー型認知症はイギリスでは第1位、アメリカでは第3位、日本では第10位(女性)という結果が出ています。
フランスでは2018年、既存の治療薬4種が医療保険の適応外になってしまいました。こういった経緯から、アルツハイマー型認知症は世界でも治療薬がないと考えられています。
日本では薬以外の治療法として、超音波によるアルツハイマー型認知症の治療が臨床試験中となっています。
なぜ超音波が認知症の治療に使われるかというと、認知症は脳の血流不足が原因ということがわかり、低出力の超音波には血管新生の効果があるからだそうです。
マウス実験では脳に超音波をあてることで、血流が改善して認知機能の低下が防げたという結果がすでに出ています。
なぜ認知機能の衰えを超音波で防ぐことができるのかというと
・超音波で血流が良くなる
・血管内で一酸化窒素が増える
・炎症がとれてアミロイドβの蓄積が抑制される
と、考えられています。
この研究をされている東北大学大学院医学系研究科の下川宏明教授は、3,4年後には超音波での治療を人に対して実用化できないかと思われているそうです。
家族が認知症になったら
家族が認知症になった場合にとる対策は4つといわれています。
・公営の特別養護老人ホーム(特養)に入居
・民営の有料老人ホームもしくは、サービス付き高齢者住宅(サ高住)に入居
・認知症の高齢者が数人で共同生活を送るグループホームに入居
・在宅で介護
特別養護老人ホームだと1か月10万~15万円、有料老人ホームだと1か月25万~30万円かかるといわれています。民間施設が提供する介護サービスに保険が適用されない場合には、月額基本料金にプラスされて請求がきます。
引用︰認知症保険の必要性 - 気になる話題を深掘りしてみよう
家族が認知症になるだけで、かなりのお金が必要になってきます。認知症破産という言葉もできているくらいなので、まずは「イライラしない」「気にしない」など、できることから始めてみましょう。