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若い人に多い胚細胞腫瘍ってどんな病気

聞いたことのないような病名が昔よりも増えているような気がするのですが、最近みかけた「胚細胞腫瘍」もはじめて聞いた病名でした。

 

漢字か何かしらの腫瘍だということは分かるのですが、どういった病気なのか気になったのでちょっと調べてみました。

 

 

胚細胞腫瘍とは

若い人に発生しやすく進行も早いといわれている胚細胞腫瘍ですが、歌手のmisonoさんの旦那さんのNosukeさんが発症したことで話題になりました。

 

胚細胞腫瘍は、悪性腫瘍の1つで生殖器と体の中心線に沿った部分、胸の中やお腹の中、脳などに発生しやすいといわれいて、性腺原発(精巣や卵巣)と、性腺外原発(後腹膜、縦隔、松果体など)の2つに分類されます。

 

胚細胞腫瘍の細胞は、赤ちゃんの時期(胎生期)に原始胚細胞という細胞(いろいろな内臓に分化することができる能力を持った細胞)が、悪性腫瘍になっていると考えられています。

 

胚細胞腫瘍になりやすい年齢

胚細胞腫瘍が発生しやすい年齢は10代から30代で、小児のときに発生する場合は半数が生殖器以外の部位から発生します。

 

しかし、青年期に発生する場合には生殖器、特に男性の精巣発生が9割以上を占めています。

 

男性の胚細胞腫瘍の発生は、年間10万人あたり1人〜3人程度と報告されていてますが、比較的まれな腫瘍ともいわれています。

 

胚細胞腫瘍は、遠隔転移(がん細胞が元あった場所から血液やリンパ液を介して遠隔臓器に運ばれ、そこで新しいがんが出現すること)があっても根治できる腫瘍の1つで、進行期であっても適切に治療を行うことがとても大切になります。

 

胚細胞腫瘍の治療方法

胚細胞腫瘍の治療方法は、精巣から発生したと考えられる場合には進行期は関係なく、診断と治療のためにもまずは精巣の摘除術を行い、そこから進行度や組織型に応じて、追加治療を行います。

 

進行度が高い場合の追加治療としては、化学療法などがあります。性腺外の胚細胞腫瘍については、精巣原発胚細胞腫瘍の進行期にあわせて治療を行うことが多く、治療の主体は化学療法になります。

 

腫瘍マーカー高値や、遠隔転移が認められたりといったことが進行期の基準になります。進行期の胚細胞腫瘍に対する化学療法は、BEP療法というシスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンを併用したものが多く用いられています。


病気の状況次第では、組織型が奇形腫の場合には手術を治療の中心に、頭蓋内発生の場合には化学療法の後に放射線治療をすることもあります。

 

胚細胞腫瘍の症状

10代から30代に発生しやすいといわれる胚細胞腫瘍ですが、どうんな症状があらわれるのでしょうか。

 

若いから大丈夫とはいえない病気なので、少しでも気になる症状があれば早めに医療機関の受診をした方が良いかも知れません。

 

 

 

卵巣にできる胚細胞腫瘍

卵巣にできる胚細胞腫瘍は、10代の思春期以降に多くみられます。症状としては、腹痛や巨大な腹部腫瘤があげられます。

 

10%程度の症例は、卵巣腫瘍がねじれてしまい、激しい腹痛で発症する茎捻転や、腫瘤の出血破裂による急性腹症で発症し、緊急の手術をすることもあります。

 

卵巣ホルモンが卵巣腫瘍から分泌されることもあるのですが、この場合には無月経、月経困難症、思春期早発、多毛症、男性仮性半陰陽などの症状がみられることがあります。

 

精巣にできる胚細胞腫瘍

精巣にできる胚細胞腫瘍は、痛みのない精巣腫瘤として気づかれることが多くあります。ただ、陰嚢水腫やそけいヘルニアと間違われることもあるので注意が必要です。

 

精巣腫瘤の中でも、卵黄嚢癌や奇形腫は幼児期の2〜3歳の時期に多いですが、ほとんどの場合は10代の思春期以降に発症します。

 

腫瘍がホルモンを産生することがあるので、男性化・女性化徴候や思春期早発の症状がみられることもあります。

 

胚細胞腫瘍診断の検査

ひどい症状がでれば病院へ救急搬送されてしまう胚細胞腫瘍ですが、診断するにはどういった検査を行うのでしょうか。

 

あまり耳にすることがない病気なので、検査は大きな病院に行くことになりそうです。

 

血液検査・尿検査

卵黄嚢の成分を含む卵黄嚢がんや悪性奇形腫では、血清中のAFP(αフェトプロテイン)が高値となります。

 

出生時にはAFPは50,000ng/ml程度なのですが、幼児期以降は成人と同様の10ng/ml以下になるので、乳児期の胚細胞腫瘍を疑うときには、年齢に応じたAFP値との比較をします。


胎盤の絨毛細胞から分泌される性腺刺激ホルモンHCG(ヒト胎盤性ゴナドトロピン)は、絨毛上皮成分を含む絨毛上皮がんで高値になります。

 

まれに胎児性がんで高値を示すこともありますが、通常は血清中や尿中のHCGとβHCGを測定します。


CEA、CA19-9は、胚細胞腫瘍のうち、卵黄嚢成分を含んだ卵巣未熟奇形腫で値が上昇することがあります。

 

CA125は、成人の卵巣がんの腫瘍マーカーとして有用ですが、小児では胚細胞腫瘍の卵黄嚢がんや未熟奇形腫で上昇することがあるので診断に有用だといわれれいます。

 

画像検査

腫瘍の大きさや広がりを確認するには、超音波、CT、MRIなどで調べます。奇形腫の場合は、腫瘍内に石灰化や嚢胞性の病変がみられることもあるので診断にとても有用です。

 

悪性腫瘍の疑いがある場合には、後腹膜リンパ節・肺・骨などの遠隔転移を調べるために、胸部レントゲン、CT、骨シンチなどの精査が必要となります。

 

胚細胞腫瘍の生存率

精巣や卵巣に腫瘍ができた場合の悪性胚細胞腫瘍5年生存率は90%を超えていますが、精巣以外の場所に腫瘍ができている場合には治癒率が80%まで低下します。

 

ただ、胚細胞腫瘍は遠隔転移があったとしても、抗がん剤が非常に有効なので根治しやすい腫瘍といわれています。

 

ステージ等にもよる思われていますが、胚細胞腫瘍が発生したら早めの診断と適切な治療が大切になります。

自己判断することなく、病気と向き合う姿勢が腫瘍根治の鍵となりそうですね。